心の中に残る本物のコーヒー

ショッピングの途中でふらっと入った喫茶店。

けして綺麗な外観ではなかったのですが、歩き疲れた私は休憩したい一心でドアを開けました。

今まであまり喫茶店には馴染みがなく、多少ドキドキしながら店に入ったのを覚えています。

店内には私以外にお客様の姿はなく、ニコニコと人当たりの良さそうなマスターが「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれました。

漂うコーヒーの香りとゆったりと流れるBGM。

椅子にかけてから、目を閉じてすぅっと鼻から香りを吸い込んでみたりします。

いままではコーヒーの銘柄やブレンドなどほとんど気にしたことがなかったので、メニューを見てもサッパリわかりません。

そんな私にマスターが、苦いのが好き?酸っぱいのはどうですか?香りは甘めのがいいかな?シュガーは入れる?ミルクはどうしますか?などと質問をしてくれます。

私は雑談をまじえながら話してくれるマスターに、心地よい気分で答えていきました。

ひとしきり質問を終えたようで、マスターは言いました。

それなら、今日は私がブレンドしたコーヒーを飲んでみませんか、シュガーもミルクももちろんあなたの好きな味にして飲んで欲しいのです。

ただ最初の一口だけ、何もいれずにコーヒーを飲んでみて欲しいのです、とマスターは微笑みながら私に言いました。

しばらくして目の前に出てきたコーヒーはうっとりするほどのいい香りで、何度かすぅはぁと深く香りを吸い込んでしまいました。

そっと口に運ぶと、鼻だけで感じた香りよりも強くて甘い香りがしました。

苦味はあるものの、下の上で苦味を感じたあと、すっと消えてしまい、香ばしい後味だけが残るのです。

私は美味しさにビックリしてマスターの顔をまじまじと見てしまい、マスターは少し恥ずかしそうにしながら、いかがですか?と微笑みました。

こんなコーヒーは初めて飲んだこと、甘くしなくてもすごく美味しいこと、疲れがどこかに行ってしまったことなど、興奮して話していました。

マスターは、あなたに似合うコーヒーを選ぶことができて本当に良かったです、と微笑みました。

その後も何度かマスターの喫茶店に足を運び、ホッとする時間を分けて頂いた感じを楽しみました。

コーヒーにもともと詳しくない私は、ブレンドの中身も全くわかりません。

そういう人にとっては、むしろコーヒーマシーンなどの方が良いかもしれませんね。

最近はネスカフェドルチェグストっていう、ツイッターでも美味しいと評判のマシーンもあるくらいですから。

本格的なコーヒーで、味も良いみたいですよ。

それから生活が変化し数年ぶりに喫茶店を尋ねてみると、お店は無くなっていました。

ほんの数回ですが、交差したマスターと私の時間が懐かしく、寂しくなりました。

初めて味あわせてもらった本物のコーヒーは、今だに私の中で色褪せない思い出です。

コーヒーマシーンも良いけど、やっぱりカフェもいいですからね。

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